急性リンパ性白血病という病🥼天久鷹央の推理カルテ #5 【鷹央が向き合う小さな命…過去最大の岐路!】
急性リンパ性白血病
こんにちは
猫好き父さんです
この回は
偶然
アニメと同じだったので
予備知識ありで観ましたが
この病院は
薬剤管理が
かなりいい加減だと
思いましたね
あらすじ
退院間近の小児患者3人が、次々と原因不明の急変に襲われた。一方、時を同じくして、小児科にはたびたび“天使”が出現するという噂が出回る。その“天使”を目撃したのは、白血病と闘う8歳の三木健太−健太の名を聞いた天才医師の名探偵・天久鷹央(橋本環奈)は激しく動揺。なぜか、診断を断固拒否してしまう…。鷹央と健太は、一体どんな関係なのか。医師としても、人としても…。鷹央が過去最大の岐路に立つ、運命の衝撃回!
出演
橋本環奈、三浦翔平、畑芽育、玉田志織・佐々木希・柳葉敏郎 【ゲスト】橋本マナミ、石塚陸翔、柴崎楓雅知念実希人『天久鷹央の推理カルテ』(実業之日本社文庫刊)
音楽
【音楽】得田真裕 【主題歌】Da-iCE『Black and White』(avex trax) 【オープニングテーマ】CROWN HEAD『Hidden』(ユニバーサルミュージック/Virgin Music)
急性リンパ性白血病
急性リンパ性白血病(Acute Lymphoblastic Leukemia, ALL)は、血液のがんの一種で、白血球の一種であるリンパ球が未熟なまま異常に増殖してしまう病気です。主に小児に多く見られますが、成人にも発症します。
1. 急性リンパ性白血病とは?
骨髄(骨の中にある血液を作る場所)では、様々な血液細胞(赤血球、白血球、血小板)が作られています。リンパ球もその一つで、免疫機能において重要な役割を担っています。
急性リンパ性白血病では、このリンパ球の元となる細胞(リンパ芽球)が異常をきたし、がん細胞(白血病細胞)となります。この白血病細胞は、正常なリンパ球に成長することなく、骨髄内で急速に増殖します。その結果、正常な血液細胞が作られなくなり、以下のような問題が生じます。
- 赤血球の減少(貧血):酸素運搬能力が低下する
- 正常な白血球の減少:免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなる
- 血小板の減少:出血しやすくなる
白血病細胞は血液に乗って全身に広がり、リンパ節、肝臓、脾臓、中枢神経系(脳や脊髄)、睾丸などにも浸潤することがあります。
2. 原因
急性リンパ性白血病の明確な原因はまだ完全には解明されていませんが、遺伝子の異常が関与していると考えられています。いくつかのリスク要因が指摘されています。
- 遺伝的要因: ダウン症候群など特定の遺伝性疾患を持つ人では発症リスクが高まります。
- 放射線被曝: 高レベルの放射線に被曝した場合。
- 化学物質: 特定の化学物質への曝露。
- ウイルス感染: 一部のウイルス感染が関連している可能性が研究されていますが、確定的なものではありません。
- 免疫抑制状態: 臓器移植後などで免疫抑制剤を使用している場合。
ただし、これらのリスク要因がない人でも発症することがほとんどで、多くの場合は「偶然」生じた遺伝子異常が原因とされています。
3. 症状
症状は白血病細胞の増殖によって正常な血液細胞が減少することや、白血病細胞が臓器に浸潤することによって現れます。進行が早いため、急激に症状が悪化することがあります。
- 貧血による症状: 倦怠感、息切れ、顔色不良、めまいなど。
- 感染症: 発熱、のどの痛み、肺炎など、免疫力低下による感染症。
- 出血傾向: 鼻血、歯ぐきからの出血、あざができやすい、点状出血(皮膚に小さな赤い点々ができる)など。
- 骨・関節の痛み: 白血病細胞が骨髄内で増殖することで、骨や関節に痛みが生じることがあります。特に小児では、この症状で発見されるケースも多いです。
- リンパ節の腫れ: 首、わきの下、股の付け根などのリンパ節が腫れることがあります。
- 肝臓・脾臓の腫れ: 腹部が張る、不快感があるなどの症状が出ることがあります。
- 中枢神経浸潤による症状: 頭痛、吐き気、嘔吐、視力障害、顔面神経麻痺など。
- その他: 食欲不振、体重減少、寝汗など。
4. 診断
診断は主に以下の検査によって行われます。
- 血液検査: 血球数(白血球、赤血球、血小板)の異常、未熟な白血病細胞(芽球)の有無などを確認します。
- 骨髄検査(骨髄穿刺・骨髄生検): 診断を確定するために最も重要な検査です。骨髄液を採取し、白血病細胞の形態、種類(リンパ性か骨髄性か)、染色体異常や遺伝子異常を調べます。
- 腰椎穿刺(ルンバール): 中枢神経への浸潤の有無を確認するために、脳脊髄液を採取して検査します。
- 画像検査: X線、CT、MRIなどで、リンパ節や臓器の腫れ、骨の変化などを確認します。
5. 治療
急性リンパ性白血病の治療は、主に**化学療法(抗がん剤治療)**が中心となります。治療は複数の段階に分けて行われ、数か月から数年に及ぶ長期的な治療計画となります。
- 寛解導入療法: 最初に強力な抗がん剤を投与し、白血病細胞をできる限り減らして「寛解」(骨髄中の白血病細胞が5%未満になり、正常な血液細胞の回復が見られる状態)を目指します。
- 地固め療法: 寛解導入療法で残った微量の白血病細胞を排除するために、さらに強力な抗がん剤治療を行います。
- 強化療法/維持療法: 再発を防ぐため、比較的弱い抗がん剤を長期間にわたって服用したり、間欠的に投与したりします。
- 中枢神経系予防療法: 白血病細胞が脳や脊髄に浸潤するのを防ぐため、腰椎穿刺による抗がん剤の注入や、脳への放射線治療を行うことがあります。
- 造血幹細胞移植(骨髄移植など): 特に再発リスクが高い場合や、再発してしまった場合に検討されます。大量の抗がん剤や放射線で白血病細胞を徹底的に排除した後、健康なドナーから提供された造血幹細胞を輸注し、新しい血液細胞の生産を促します。
- 分子標的薬・免疫療法: 特定の遺伝子異常を持つタイプや、従来の治療が効きにくい場合に、標的を絞った薬剤や、免疫細胞の働きを活性化させる治療法が用いられることがあります。小児ALLでは、CAR-T細胞療法などの先進的な治療も導入されています。
6. 予後
急性リンパ性白血病の予後は、診断時の年齢、白血病細胞のタイプ、染色体異常や遺伝子異常の種類、治療に対する反応など、多くの要因によって異なります。
- 小児ALL: 治療法の進歩により、特に小児の急性リンパ性白血病は、治癒率が非常に高いがんの一つとなっています。多くの場合、80%以上の治癒率が期待できます。
- 成人ALL: 成人の場合は、小児に比べて治癒率が低い傾向にありますが、近年は新しい治療法の登場により、成人ALLの予後も改善されつつあります。
治療中は副作用も伴いますが、医学の進歩により、多くの患者さんが克服できる病気になってきています。専門の医療機関で適切な診断と治療を受けることが非常に重要です。
発作性上室性頻拍(Paroxysmal Supraventricular Tachycardia, PSVT)
発作性上室性頻拍(Paroxysmal Supraventricular Tachycardia, PSVT)は、心臓の拍動が突然速くなる不整脈の一種です。命に関わることは稀ですが、動悸が強く出るため、日常生活に支障を来すことがあります。
1. 発作性上室性頻拍とは?
私たちの心臓は、洞結節(どうけっせつ)という部分から発生する電気信号によって規則正しく拍動しています。この電気信号は、心房(心臓の上の部屋)から房室結節(心房と心室の間にある電気のゲート)、そして心室(心臓の下の部屋)へと伝わっていきます。
発作性上室性頻拍は、「上室」(心房や房室結節のある心臓の上部)に異常な電気回路や余分な電気経路が存在することで、電気信号が正常な経路を通らずにぐるぐると回り(リエントリーと呼ばれる現象)、脈拍が突然速くなる不整脈です。
特徴としては、以下の点が挙げられます。
- 突然発症、突然停止: 何の前触れもなく急に動悸が始まり、しばらく頻拍が続いた後、急におさまります。
- 規則正しい頻脈: 発作中の脈拍は1分間に150~200回と非常に速くなりますが、脈は規則正しいことが多いです。
- 比較的若い人に多い: 若い人によく見られ、基礎疾患のない健康な人でも発症することがあります。
2. 主な原因
発作性上室性頻拍の主な原因は、心臓の上室にある異常な電気伝導路や回路です。代表的なものには以下の種類があります。
- 房室結節リエントリー性頻拍(AVNRT): 最も一般的なタイプで、心房と心室の間にある房室結節内に、電気信号の通り道が2つ(速い経路と遅い経路)存在することで、電気信号がぐるぐる回って頻拍を引き起こします。
- 房室回帰性頻拍(AVRT)/ WPW症候群: 生まれつき心房と心室を直接つなぐ「副伝導路(ケント束)」という余分な電気の通り道がある場合に起こります。この副伝導路を通って電気信号がぐるぐる回ることで頻拍が生じます。WPW症候群は、この副伝導路がある状態を指し、発作性上室性頻拍の原因となることがあります。
- 心房頻拍: 心房内のどこか一部に、異常に速い電気信号を発生させる場所(異所性興奮源)ができることで頻拍が起こります。
これらの異常な電気回路は、疲労、飲酒、運動、ストレス、カフェインの過剰摂取などによって誘発されやすくなると言われています。
3. 症状
発作性上室性頻拍の症状は、突然現れ、突然治まるのが特徴です。
- 動悸: 突然、胸がドキドキする、心臓がバクバクするといった強い自覚症状が出ます。心臓が跳ねるように感じる人もいます。
- 胸部の不快感、胸苦しさ: 胸が締め付けられるような、苦しい感じがすることがあります。
- 息切れ: 脈拍が速すぎて心臓が効率よく血液を全身に送り出せないため、息切れを感じることがあります。
- めまい、ふらつき: 脈拍が極端に速くなると、血圧が低下し、脳への血流が一時的に不足することでめまいやふらつきが生じます。
- 失神: 重症の場合や、長時間頻拍が続くと、血圧が大きく低下して意識を失う(失神)こともあります。
- 発汗、不安感: 動悸に伴い、冷や汗をかいたり、強い不安を感じたりすることもあります。
4. 診断
診断には、発作時の心電図記録が最も重要です。
- 12誘導心電図: 発作が起きているときに心電図を記録できれば、診断はほぼ確定します。規則正しい速い脈で、QRS波(心電図の波形の一部)の幅が狭いことが特徴的です。
- ホルター心電図: 24時間以上装着して心電図を記録する検査です。発作が比較的頻繁に起こる場合に有効です。
- イベントレコーダー/携帯型心電計: 発作が不定期で短時間にしか起こらない場合、症状が出た時に患者さん自身がボタンを押して心電図を記録する機器を使用します。
- 心臓電気生理学的検査: 確定診断や治療方針を決めるために行われる精密検査です。カテーテルを心臓内に入れ、心臓の電気的な活動を詳細に記録し、異常な電気回路の場所を特定します。この検査は、カテーテルアブレーション治療と同時に行われることも多いです。
5. 治療法
発作性上室性頻拍の治療は、発作時の対処と、発作の予防・根治の2つの側面があります。
5.1. 発作時の対処法
発作が起きた際に、自分で頻拍を止めるための方法があります。これらは「迷走神経刺激法」と呼ばれ、迷走神経を刺激することで心拍を一時的に遅らせる効果があります。
- バルサルバ手技: 息を大きく吸い込み、口と鼻を閉じて、お腹に力を入れていきむ(便秘の時にいきむようなイメージ)。
- 冷水洗顔: 冷たい水で顔を洗う、または冷たい水を一気に飲む。
- 頸動脈マッサージ: 医師が行う手技で、首の頸動脈をマッサージして迷走神経を刺激します。患者さん自身が行うのは危険なので、医療従事者以外は行わないでください。
これらの方法で止まらない場合や、症状が重い場合は、速やかに医療機関を受診する必要があります。病院では、点滴で心拍を抑える薬(アデノシンなど)が投与されることがあります。
5.2. 予防・根治治療
- 薬物療法: 頻繁に発作が起こる場合や、症状が強く日常生活に支障がある場合に、発作を予防するために抗不整脈薬(ベータ遮断薬、カルシウム拮抗薬など)が処方されます。薬物療法は発作を抑える対症療法であり、根治治療ではありません。
- カテーテルアブレーション: 発作性上室性頻拍の根本的な治療法として最も推奨されています。足の付け根の血管から細いカテーテルを心臓内に挿入し、異常な電気回路の場所を特定します。特定した異常部位に高周波電流などを流して焼灼(しょうしゃく)し、電気回路を遮断することで頻拍が起こらないようにします。 成功率は非常に高く(90~95%以上)、一度成功すれば薬を続ける必要がなくなることが多いです。
発作性上室性頻拍は、適切に診断され治療を受ければ、多くの場合、日常生活を問題なく送ることができます。症状がある場合は、循環器専門医に相談し、適切な診断と治療を受けることが重要です。
急速静注(きゅうそくせいちゅう)
「急速静注(きゅうそくせいちゅう)」とは、薬剤を非常に短時間で、直接静脈内に注入する投与方法です。英語では「ボーラス投与(bolus administration)」とも呼ばれ、薬物を一塊(かたまり)で投与するイメージから来ています。
1. 急速静注とは具体的にどのような注射方法ですか?
通常、点滴や注射は、薬剤がゆっくりと体内に吸収されるように時間をかけて行われます。しかし、急速静注では、注射器などで直接静脈に薬剤を注入し、数秒から数分といった極めて短い時間で投与を完了させます。
この方法の主な目的は、薬物の血中濃度を速やかに、かつ効果的なレベルにまで上昇させることにあります。これにより、緊急性の高い状況で迅速な薬効発現が期待できます。
2. どのような薬剤が急速静注で投与されますか?
急速静注が適応される薬剤は、その性質や目的によって様々です。
- 緊急性の高い薬剤:
- 心停止やショック時の薬剤: アドレナリン(エピネフリン)、アトロピン、ノルアドレナリンなど、心拍や血圧を急速に回復させる必要がある場合。
- 重度の不整脈に対する薬剤: アデノシンなど、発作性上室性頻拍などの不整脈を緊急で停止させる必要がある場合。
- アナフィラキシーショック時の薬剤: アレルギー反応による重篤なショック状態を迅速に改善するため。
- 麻酔導入薬や鎮静薬: 手術や処置の際に、意識を速やかに消失させたり、鎮静状態に導いたりするために、プロポフォールなどが用いられることがあります。
- 吐き気止めなど即効性を求める薬剤: 吐き気や嘔吐が激しく、速やかな効果が必要な場合。
- 特定の診断薬: 検査目的で、造影剤などを一時的に高濃度で流し込む場合。
- 一部の抗菌薬: 濃度依存性に効果を発揮する一部の抗菌薬で、初期の血中濃度を急速に上げることで効果を高める目的で用いられることがあります(ただし、多くの抗菌薬は副作用リスクから緩徐な点滴が推奨されます)。
【注意】 カリウム製剤など、一部の薬剤は急速静注が厳しく禁止されています。後述のリスクと関連します。
3. 急速静注を行う際の注意点やリスクは何ですか?
急速静注は、迅速な効果が期待できる反面、いくつかの重要なリスクと注意点があります。
- 副作用の急激な発現: 薬物が急速に血中に取り込まれるため、血中濃度が急激に上昇します。これにより、薬物の持つ副作用も急激に、かつ強く現れる可能性があります。
- 循環器系への影響: 血圧の急激な低下、頻脈や徐脈、重篤な不整脈(心室細動など)、最悪の場合は心停止に至る可能性があります。特にカリウム製剤の急速静注は、心停止の非常に高いリスクがあるため、厳重に禁じられています。
- 呼吸器系への影響: 呼吸抑制、呼吸停止など。特に鎮静作用のある薬剤で注意が必要です。
- 中枢神経系への影響: 痙攣、意識障害など。
- アレルギー反応: ショック症状など、重篤なアレルギー反応が急速に起こることがあります。
- 血管への刺激: 濃度が高い薬剤や血管刺激性のある薬剤を急速に注入すると、血管痛や血管炎を引き起こす可能性があります。
- 体内の電解質バランスの急激な変化: 特にカリウムなどの電解質製剤を急速に注入すると、体内の電解質バランスが急激に崩れ、重篤な合併症を引き起こします。
- 薬物相互作用: 他の薬剤を同時に投与している場合、薬物の血中濃度が急激に変化することで、予期せぬ薬物相互作用が生じる可能性があります。
- 適切な速度の確認: 薬剤の種類によって、投与速度が厳密に定められています。添付文書や医師の指示を必ず確認し、それに従って正確な速度で注入することが不可欠です。
- バイタルサインの厳重なモニタリング: 急速静注中は、患者さんの血圧、心拍数、呼吸数、意識レベルなどのバイタルサインを常に注意深く観察し、異常があれば直ちに適切な対応を取る必要があります。
4. 急速静注が適応されるのはどのような状況ですか?
急速静注は、以下の緊急性の高い状況で、迅速な薬効発現が不可欠な場合に選択されます。
- 心肺停止状態: 心臓が止まっている、または非常に危機的な状態にある場合、救命のために薬剤を速やかに投与する必要があります。
- アナフィラキシーショック: 重篤なアレルギー反応により、血圧が急激に低下し、呼吸困難などの生命に関わる症状が出ている場合。
- 重度の急性不整脈: 命に関わる可能性のある、または患者さんの状態を急速に悪化させるような不整脈を緊急で停止させる場合。
- 急性重症喘息発作: 呼吸が非常に苦しい状態を迅速に改善する必要がある場合。
- 緊急の鎮静・麻酔導入: 手術や処置を迅速に行うために、患者さんの意識を速やかに消失させる必要がある場合。
- 脳梗塞の血栓溶解療法(t-PA静注療法): 発症からごく限られた時間内に、血栓を溶解する薬剤を迅速に投与することで、脳のダメージを最小限に抑えることを目指します。
急速静注は、その効果の速さゆえに、リスクも大きい医療行為です。そのため、医師の厳密な指示と、医療従事者による慎重な手技、そして患者さんの状態の継続的なモニタリングが不可欠です。
アデノシン三リン酸(ATP)
1. アデノシン三リン酸(ATP)とは何ですか?
アデノシン三リン酸(Adenosine Triphosphate, ATP)は、「生体のエネルギー通貨」とよく例えられる、すべての生物(動物、植物、微生物)の細胞内に存在する高エネルギー化合物です。
その名の通り、ATPは「アデノシン」という部分と、「三つのリン酸」が結合した構造をしています。
- アデノシン: アデニンという塩基とリボースという糖が結合したものです。
- 三つのリン酸: アデノシンに3つのリン酸が直列に結合しています。このリン酸間の結合は「高エネルギーリン酸結合」と呼ばれ、この結合が切れる際に大量のエネルギーが放出されます。
ATPから末端のリン酸が一つ外れると、アデノシン二リン酸(ADP)とリン酸(Pi)に分解され、この分解によって生命活動に必要なエネルギーが放出されます。逆に、ADPにリン酸が結合してATPが合成される際にはエネルギーが蓄えられます。このATPとADPの間の変換が、細胞内でのエネルギーのやり取りの基本となります。
2. アデノシン三リン酸は体内でどのように作られますか?
ATPは、細胞内で絶えず合成され、消費されています。人間の場合、体内で一日に約50~100kgものATPが作られ、消費されていると言われています。主なATPの生成経路は以下の通りです。
- 有酸素呼吸(酸化的リン酸化):
- これは最も効率の良いATP生産経路であり、主にミトコンドリアで行われます。
- ブドウ糖(グルコース)や脂肪酸などの栄養素が分解され、最終的に酸素を使って大量のATPが合成されます。
- このプロセスは、クエン酸回路(TCAサイクル)と電子伝達系からなり、効率的に多量のATP(ブドウ糖1分子あたり約30~32分子のATP)を生成します。
- ほとんどの細胞で、必要なATPの約95%がこの方法で供給されています。
- 解糖系(嫌気的解糖):
- 細胞質で行われるプロセスで、酸素を使わずにブドウ糖を分解して少量のATP(ブドウ糖1分子あたり2分子のATP)を生成します。
- 酸素が不足している状態(激しい運動時など)や、ミトコンドリアを持たない細胞(赤血球など)で主要なATP供給源となります。
- ATP-CP系(リン酸クレアチン系):
- 特に筋肉で、瞬発的なエネルギー供給を必要とする際に利用されます。
- クレアチンリン酸という物質が高エネルギーリン酸結合を持っており、ADPにリン酸を素早く供給してATPを再合成します。
- ごく短時間の高強度運動(数秒間)に適したシステムです。
3. アデノシン三リン酸は体内でどのような役割を果たしますか?
ATPは、その高エネルギーを利用して、様々な生命活動のエネルギー源として機能します。
- 筋肉の収縮: 筋肉が収縮するためには、筋線維を構成するアクチンとミオシンが滑り合う必要があります。この動きにはATPのエネルギーが必要です。
- 物質の合成: タンパク質、DNA、RNA、脂質、糖質などの生体物質を合成する反応は、ATPのエネルギーを必要とします。
- 能動輸送: 細胞膜を介して、低濃度側から高濃度側へ物質を輸送するポンプ(例:Na+/K+ポンプ)は、ATPを加水分解してエネルギーを得ます。
- 神経伝達: 神経細胞が情報を伝えるための電気信号の発生や、神経伝達物質の放出・再吸収にはATPが必要です。
- 体温維持: ATPの分解によって放出されるエネルギーの一部は熱として放出され、体温の維持に貢献します。
- 発光: ホタルの発光など、生物発光の現象にもATPが関与しています。
- 細胞分裂と増殖: 細胞が分裂し、数を増やす際にも多量のATPが消費されます。
4. アデノシン三リン酸が不足するとどうなりますか?
ATPは生命活動に不可欠なため、その供給が不足すると、細胞や生体全体に深刻な影響が出ます。
- 疲労、倦怠感: エネルギー不足により、全身的な疲労感や倦怠感が現れます。
- 筋力低下、運動能力の低下: 筋肉が正常に収縮できなくなり、筋力が低下したり、運動能力が落ちたりします。
- 臓器機能の低下: 心臓、脳、肝臓、腎臓など、エネルギーを多く消費する臓器の機能が低下し、様々な疾患を引き起こす可能性があります。
- 細胞膜機能の障害: 細胞内外のイオンバランスを保つポンプが働かなくなり、細胞の機能が損なわれます。
- 代謝反応の停止: 生体内の様々な化学反応がATP依存性であるため、ATP不足は広範囲の代謝反応を停止させます。
- 免疫力の低下: 免疫細胞が十分に機能できなくなり、感染症にかかりやすくなります。
- 老化の促進: ミトコンドリアの機能低下によりATP産生が減少すると、細胞の老化が加速すると考えられています。
- 死: 極端なATP不足は、生命活動の停止、すなわち死につながります。
5. アデノシン三リン酸は医療でどのように利用されていますか?
ATP自体や、ATPの代謝に関わる物質は、医療の分野で様々な形で利用されています。
- 診断薬として(特にアデノシン):
- 不整脈の診断・治療: 急速静注の項目でも触れたように、ATPの分解物であるアデノシンは、発作性上室性頻拍(PSVT)の診断や緊急停止に用いられます。アデノシンが房室結節の伝導を一時的に抑制することで、頻拍の機序を特定したり、頻拍を停止させたりします。
- 心筋血流シンチグラフィ: 運動負荷が困難な患者さんの心臓の血流を評価するために、アデノシンを投与して冠動脈を拡張させ、心臓の血流分布を調べる検査があります。
- 治療薬として(アデホスなどの製剤):
- 代謝改善薬: 血管拡張作用、血流増加作用、代謝賦活作用などを持つATP製剤(例:アデホスコーワ)が、一部の疾患に伴う症状改善のために使用されることがあります。例えば、心不全、頭部外傷後遺症、調節性眼精疲労、メニエール病、消化管機能低下を伴う慢性胃炎などです。ただし、これらの効果については、現代医学的なエビデンスが十分でないとされる場合もあります。
- 衛生管理: 食品工場や医療現場などでは、対象物に付着する微生物や食物残渣の量を測るためのATP検査が広く用いられています。これは、生物由来の物質には必ずATPが含まれるため、ATPの量を測定することで、その場所の清浄度を迅速に評価できるためです。
ATPは、まさに生命活動の根源を支える重要な分子であり、その機能や代謝の理解は、生理学、生化学、そして医療のあらゆる分野において不可欠です。
WPW症候群(Wolff-Parkinson-White症候群)
WPW症候群(Wolff-Parkinson-White症候群)は、心臓の電気伝導系の異常によって起こる不整脈の一つで、生まれつき心房と心室の間に「副伝導路(ふくでんどうろ)」という余分な電気の通り道がある状態を指します。
1. WPW症候群とは具体的にどのような状態ですか?
正常な心臓では、電気信号は「洞結節」で発生し、心房を伝わって「房室結節」を通り、その後「ヒス束」から心室へ伝わって心臓全体を収縮させます。この房室結節は、心房から心室へ電気信号が速すぎないように、また逆流しないように調整する「ゲート」の役割を果たしています。
WPW症候群の心臓には、この房室結節とは別に、心房と心室を直接つなぐ「副伝導路」(ケント束とも呼ばれます)が存在します。この副伝導路は、正常な伝導路よりも電気信号を速く伝導する性質を持っていることがあります。
この副伝導路があるために、以下のような現象が起こり、不整脈の原因となります。
- デルタ波(Delta wave)の出現: 副伝導路を通って電気信号が心室に通常よりも早く到達するため、心電図上、QRS波の立ち上がりがなだらかになる特徴的な波形(デルタ波)が見られます。また、PQ時間(心房から心室への電気伝導時間)が短縮し、QRS幅(心室の興奮時間)が延長することもあります。
- リエントリー性頻拍の発症: 副伝導路と正常な伝導路(またはその一部)の間で、電気信号がぐるぐると旋回する「リエントリー」と呼ばれる現象が起こりやすくなります。これにより、脈拍が突然速くなる頻拍(頻脈発作)が発生します。最も一般的なのは「房室回帰性頻拍(AVRT)」と呼ばれるタイプの頻拍です。
WPW症候群自体は先天性のものですが、症状が出るのは若年成人期が多いとされています。すべてのWPW症候群の人が頻拍発作を起こすわけではなく、心電図異常があるだけで症状がない「無症候性WPW症候群」のケースも多く存在します。
2. WPW症候群の症状はどのようなものがありますか?
WPW症候群の症状は、主に発作性上室性頻拍(PSVT)として現れます。症状は突然始まり、突然止まるのが特徴です。
- 動悸: 突然、胸がドキドキする、心臓がバクバクするといった強い自覚症状が出ます。脈拍は1分間に150~200回と非常に速くなることが多いです。
- 胸部の不快感、胸苦しさ: 胸が締め付けられるような、苦しい感じがすることがあります。
- 息切れ: 脈拍が速すぎて心臓が効率よく血液を全身に送り出せないため、息切れを感じることがあります。
- めまい、ふらつき: 脈拍が極端に速くなると、血圧が一時的に低下し、脳への血流が不足することでめまいやふらつきが生じます。
- 失神: まれですが、血圧が大きく低下して意識を失う(失神)こともあります。
- 冷や汗、不安感: 動悸に伴い、冷や汗をかいたり、強い不安を感じたりすることもあります。
稀ですが重篤な合併症:
WPW症候群で最も注意すべきは、心房細動と呼ばれる別の不整脈を合併した場合です。心房細動は心房が不規則に興奮する不整脈ですが、WPW症候群ではこの不規則な速い電気信号が副伝導路を通って直接心室に伝わることがあります。これにより、心室が非常に速く不規則に拍動する「心室細動」に移行しやすくなり、突然死のリスクが高まることがあります。このため、無症状のWPW症候群であっても、適切な評価と治療の検討が重要になります。
3. WPW症候群はどのように診断されますか?
WPW症候群の診断は、主に心電図検査によって行われます。
- 標準12誘導心電図:
- 発作が出ていない安静時の心電図でも、WPW症候群の特徴的な波形が見られることがあります。
- PQ時間短縮(P-Q短縮): 心房から心室への電気伝導時間が短くなります(0.12秒以内)。
- デルタ波(Δ波): QRS波の立ち上がりがなだらかになる特徴的な波形が見られます。
- QRS幅延長: QRS波の幅が広くなります。
- 学校検診や健康診断の心電図で、自覚症状がなくてもWPW症候群の心電図変化が発見されることもあります。
- ホルター心電図: 24時間心電図を記録する検査で、不整脈の発作が頻繁に起こる場合に有効です。
- イベントレコーダー/携帯型心電計: 発作が不定期で短時間にしか起こらない場合、患者さん自身が症状が出たときに心電図を記録する機器です。
- 心臓電気生理学的検査(EPS): 診断を確定し、治療方針を決定するために非常に重要な精密検査です。カテーテルを心臓内に入れ、心臓の電気的な活動を詳細に記録することで、副伝導路の有無、位置、電気生理学的特性(伝導速度、不応期など)を特定します。この検査は、後述のカテーテルアブレーションと同時に行われることが多いです。
WPW症候群には、安静時の心電図では異常が見られないが、頻拍発作を起こす「潜在性WPW症候群」というタイプもあります。この場合、心臓電気生理学的検査で副伝導路が確認されます。
4. WPW症候群の治療法にはどのようなものがありますか?
WPW症候群の治療は、症状の有無や重症度、合併症のリスクによって異なります。
- 無症状の場合:
- 心電図異常があるだけで症状が一度もない場合は、定期的な経過観察となることが多いです。ただし、心室細動など重篤な不整脈のリスクを評価するために、電気生理学的検査が検討されることもあります。特に、スポーツ活動をする人や、将来的に妊娠を考えている女性など、リスクが高いと判断される場合には、根治的治療が推奨されることもあります。
- 発作時の対処法(対症療法):
- 発作が起きた際には、迷走神経を刺激して心拍を一時的に遅らせる「バルサルバ手技」(息をこらえていきむ)や、冷水で顔を洗うなどの方法が有効な場合があります。
- 病院では、点滴で心拍を抑える薬(アデノシンなど)が投与されることがあります。ただし、心房細動を合併しているWPW症候群では、ジゴキシン、アデノシン、ベラパミル、ジルチアゼムなどの薬剤は、副伝導路での伝導を促進し、心室細動のリスクを高める可能性があるため、禁忌とされています。
- 薬物療法:
- 頻繁に発作が起こる場合や、症状が強く日常生活に支障がある場合に、発作を予防するために抗不整脈薬(ベータ遮断薬、カルシウム拮抗薬など)が処方されます。薬物療法は発作を抑える対症療法であり、根治治療ではありません。
- カテーテルアブレーション(経皮的カテーテル心筋焼灼術):
- WPW症候群の根治的な治療法として最も推奨されています。
- 足の付け根の血管などから細いカテーテルを心臓内に挿入し、心臓電気生理学的検査で特定された異常な副伝導路の部位に、高周波電流などを流して焼灼(しょうしゃく)し、電気回路を遮断します。
- 成功率は非常に高く(90~95%以上)、一度成功すれば薬を続ける必要がなくなることが多いです。体への負担も比較的少なく、入院期間も短期間で済みます。
WPW症候群は、適切に診断され、必要に応じて治療を受ければ、多くの患者さんが通常の生活を送ることができます。症状がある場合は、循環器専門医に相談し、適切な診断と治療方針について話し合うことが重要です。
『#天久鷹央の推理カルテ』
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前回までの天久鷹央の推理カルテ
最近のドラマはリアリティを求めすぎて専門用語が多すぎるかな💉天久鷹央の推理カルテ #4 【姉が真犯人!?完結!麻酔科医殺人事件・衝撃結末】
透明人間あらわるあわらる♬天久鷹央の推理カルテ #3容疑者は姉!ドクター殺人事件VS天才医師の名探偵
ベストスマイルと慢性ヒ素中毒、SLE、心タンポナーデ、光線過敏症🥼天久鷹央の推理カルテ #2 【名探偵の天才ドクターVS水神様の祟りの謎】
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